著作権についてのひとつの考え方 〜【祝婚歌】吉野弘氏の言葉に共感します〜

披露宴の司会をしていると、さまざまなスピーチを耳にします。
「結婚生活において大切な三つの袋」とか「夫婦生活に訪れる三つの坂」とかいろいろあるけど私は【祝婚歌】という詩が好き。

まずはご紹介させてください!


『 祝 婚 歌 (しゅくこんか)
吉野 弘
二人が睦まじくいるためには
愚かでいるほうがいい
立派過ぎないほうがいい
立派過ぎることは
長持ちしないことだと
気づいているほうがいい
完璧をめざさないほうがいい
完璧なんて不自然なことだと
うそぶいているほうがいい
二人のうち どちらかが
ふざけているほうがいい
ずっこけているほうがいい
互いに非難することがあっても
非難できる資格が自分にあったかどうか
あとで疑わしくなるほうがいい
正しいことを言うときは
少しひかえめにするほうがいい
正しいことを言うときは
相手を傷つけやすいものだと
気づいているほうがいい
立派でありたいとか
正しくありたいとかいう
無理な緊張には色目を使わず
ゆったりゆたかに
光を浴びているほうがいい
健康で風に吹かれながら
生きていることのなつかしさに
ふと胸が熱くなる
そんな日があってもいい
そしてなぜ 胸が熱くなるのか
黙っていてもふたりには
わかるのであってほしい



・・・・・・・・・(/_;)ううっ。ええなぁ。
夫婦の理想の在り方が、のびのびと語られていて、その内容も語り口のやさしさも大好きな詩です。
この詩に出会ったことで詩人 吉野弘さんのことを調べていて、この詩の「著作権」についての考え方が、さらに素晴らしかったので、こちらをぜひご紹介させてください。


この「祝婚歌」って「民謡みたいなもの」だと思うんですよ。
民謡というのは、作詞者とか、作曲者がわからなくとも、歌が面白ければ歌ってくれるわけです。だから、私の作者の名前がなくとも、作品を喜んでくれるという意味で、私は知らない間に民謡を一つ書いちゃったなと、そういう感覚なんです。
民謡というのは、著作権料がいりませんよ。 作者が不明ですからね。
もし「掲載したいんですが著作権料とかをどうしたら・・・・」と聞かれるとしますね。
こうやって聞いてくださる方は、非常に良心的に聞いてくださるわけですね。
だから「そういう著作権料というのは心配はまったく要りませんから、どうぞ自由にお使いください」そういうふうに答えることにしています。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『人生の達人たちに学ぶ~渡る世間の裏話』(早坂茂三著:東洋経済新報社刊)より抜粋



作者にとって自らが生み出した作品はかけがえのないもの。それを守ろうと考えるのは当然のことです。でも吉野氏は作品を多くの人柄を喜んでくれるならどうぞ自由に使ってください、とおっしゃる。

自分だけのものにしようと力いっぱい抱え込む、のではなく手を開いてどうぞ、と言って渡してくれる。この心の広さが、詩そのものに染みているように感じます。

”夫婦”を大らかに見つめる吉野氏のような視線や感性を、私の中にも育てていきたいと思います。





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