峠は決定をしいるところだ。 峠には決別のためのあかるい憂愁がながれている。 峠路をのぼりつめたものは のしかかってくる天碧に身をさらし やがてそれを背にする。 風景はそこで綴じあっているが ひとつをうしなうことなしに 別個の風景にはいってゆけない。 大きな喪失にたえてのみ あたらしい世界がひらける。 峠にたつとき すぎ来しみちはなつかしく ひらけくるみちはたのしい。 みちはこたえない。 みちはかぎりなくさそうばかりだ。 峠のうえの空はあこがれのようにあまい。 たとえ行手がきまっていても ひとはそこで ひとつの世界にわかれねばならぬ。 そのおもいをうずめるため たびびとはゆっくり小便をしたり 摘みくさをしたり たばこをくゆらしたりして 見る限りの風景を眼におさめる。 【峠】 真壁仁 著 *:..。o○☆゜・:,。*:..。o○☆*:..。o○☆゜ 私もいま 人生の峠に立っています。 眼下に広がる景色は、幼い頃に想像していたのと違いますが だいぶ面白そうです。
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